1週間ほど前の話になってしまいますが、以下のようなニュースが出されていました。
どういう制度か
簡単にまとめると以下のような感じです。
- 松山市内の中小企業に対し、RPAの導入費用の半額を市が補助(最大50万)
- RPA経費はライセンス費用だけでなく導入支援や保守などの作業経費も可(ただしハードウェアなどは含まれない)
- 補助対象のツールに指定はないが、この補助金に合わせてWinActorは特別料金プランを設けている
ちなみに松山市の制度説明のページはこちら。
RPAは安くない?
RPAは「システム開発より早くて安いです!」を売りに爆発的な拡大を見せてきましたが、主要製品のライセンス料は、年額で2桁万円の後半くらいからにはなってきます。
2桁の後半、というのは、中小企業にとってはまだまだ費用負担の大きい製品です。
大企業のグループ会社であれば、本社が大規模調達で安くRPAライセンスを仕入れてくれて、導入サポートもしてくれて、というケースもあったりしますが、まだまだRPAが「高嶺の花」になっている企業は少なくありません。
実際、ブームによって期待が先行しすぎたために「全然安くないですね・・・」と言われることも多々あったり。
松山市補助金制度のここがイイネ
この補助金制度が素晴らしいなと思ったところは2つあり、まずはベンダ側にも協力を仰いで特別プランを用意させていることです。
①WinActorの特別料金プランが設定されている
この特別メニュー、「通常価格で175万円ほどするところを、なんと100万円でご提供!」という通販番組のようなプライスダウンになっています。
- ・WinActorフル機能版1ライセンス
- ・50時間導入支援パック
- ・2カ月有償トライアル(操作研修含む)
製品開発サイド(正確な製造元はNTTアドバンステクノロジ)なのでライセンス費用はいくらでも下げる余地があるのかもしれませんが、50時間のSE支援と操作研修も含まれているんですよね。
ここは人件費に直結するので、ベンダとしてあまり下げたくないところですから、かなり「お勉強」させているなと感じた次第です。
しかも、NTTデータはSIerの中でも安易な値下げを好まない印象がありますから。(私の私見ですが・・・)
で、値下げ後価格が100万円ですから、今回の補助金の枠をきっちり使い切れるように設計されているんですよね。
175万円相当が、企業側は50万円のキャッシュアウトで利用できるわけですから、使いたくなる人も多いのではないかと思います。
②導入支援・保守が考慮されている
前述の通り、とはいえ2桁万円のライセンスって、中小企業にとっては決して安くありません。
大企業にとっては「最悪、失敗しても痛くない」という感覚で始められる側面がありますが、「安くない」という感覚を持っている中小企業にとっては、「失敗できない」という緊張感を持って進めることになります。
とはいえRPAなんて新しい概念の製品、独学で進めて行くのは間違いなく不安でしょう。
やってみれば簡単で、という方も多いですが、「失敗できない」という思いのせいで、1歩目の投資判断がとにかく難しくなってしまう。
であればプロに協力を依頼したいところだけれど、ライセンスだけでも高いのにこれ以上お金は・・・。という絡み合ったジレンマも、この補助金制度は解決してくれます。
①で触れたNTTデータの特別プランにも、しっかり50時間分の導入支援が含まれています。
50時間もプロのサポートがあれば、よほど複雑でなければいくつかの自動化処理を組むことは可能ですから、「50万円の重み」を軽減してくれる、非常に心強いプランです。
企業の担当者さんも、安心して社長に話を持ちかけやすいのではないでしょうか。
公的機関によるRPA導入支援の流れ
中小企業向けの「IT導入補助金」という制度は過去から存在していますが、今回のように「RPA」などより細かな分野に特化した制度は、珍しいのではないでしょか。
そして、このRPAへの補助の流れは、松山市だけではなく、今後追随する自治体も現れてくることは、想像に難くないです。
つくば市なんか、市長が「日本一ロボットが活躍する自治体を目指す」って言ってますしね。
今回の松山市の「RPA先進都市まつやまの実現に向けた連携協定」っていう取り組みも、かなり刺激があるんじゃないでしょうか。
(そういえばどっちも、ベンダーはNTTデータですね)
今後、自治体として、あるいは今後省庁として、「みんなRPAどんどん使っていこうな!」という号令が活発に出てくれば、今までRPAが行き渡っていなかった企業にも、浸透が進んで行くことが考えられます。
さらにその先は、AIの補助金制度とかも、増えてくるのかもしれませんね。
少しだけネガティブな考えを述べると、「どんどんRPA!」という動きは、同時に「どんどん人間のルーチンワークは減らして行こうな!」ということでもあり、やはり仕事を奪われる人は、確実に増えていくのかな、とも思ったりはしています。
もしかしたら、自動化の流れであぶれた(という表現は失礼ですが)労働者をかき集めて、労働集約的な新しいサービスを始める会社というのも、出てくるのでしょうか。