先日、日経からRPAのムックが刊行されました。
その名も「RPA ホワイトカラー革命」、ちょっと仰々しくめ目につきます。
表紙の白い窓の集合体も脳ミソに見えてAIとかも意識しているのかなと思えます。
少し積んでいた時間がありましたが、読み終えたので感想を。
結論から言うと「読む価値がある書籍。でも、書籍のスタンスは事前に把握しておくべき。」です。
Amazonで部門ランキング1位を獲得
1ヶ月くらい経った現在は上位に見当たりませんが、発売直後の瞬間最大風速とはいえAmazon1位も獲得した注目度の高い書籍です。
NTTデータの公式サイトでもアピールしてますね。
書籍のスタンスを理解して読もう
この本は「RPAのムック」であることに間違いはないんですが、注意すべきは、NTTデータ監修ということです。
NTTデータはWinActorのセラーとして力を発揮しているベンダーであり、RPAを解説しつつ、WinActor(あるいはその関連ツール)をアピールしたいという記事はちょくちょく挟まれています。
1ページ目はNTTアドバンステクノロジの見開き広告、最後のページはNTT東日本のAI-OCRの広告、そして裏表紙はNTTデータの広告と、NTTフルコース(笑)
これ以外にもWinActor代理店などの広告が多数出ているので、「WinActor陣営の本なんだな」という理解は持っておくと、不必要な誤解などを起こさずに読み進めていけます。
WinActorユーザー以外も読む価値はある
WinActorの本だ、と意識するといっても、別に身構えて読む必要はなく、「自分が使っているRPAツールでも同じことが言えるだろうか」と考えながら読んだり、もし異なるアプローチの話が書かれていれば、それこそ新しい観点を学ぶ機会と捉えれば、必ず気付きは得られる内容です。
AIとの組み合わせ、「IPA(Intelligent Process Automation)」への進化やOCRなど、「RPAを語る」のではなく、「RPAという切り口からビジネスを考える」という目線になっています。
また、複数のインタビュー、コラムが載っているんですが、これらも面白いです。
というのも、WebでRPAの記事とかを見ると、大体は「XXXコンサルティング社の偉い人」とかが多いんですが、このムックだと早稲田のビジネススクールや国立情報学研究所の教授・准教授など、「RPA畑」でない人たちが「経営」や「労働」という切り口で話してくれていたりします。
最後のEpilogueのコラムなんかBI(ベーシックインカム)にまで話が及んでいて、さすがに飛躍してるだろとも思いましたが…(笑)
導入事例の分野が豊富
本書は5つの特集パート+広告特集(8社の代理店の広告記事)+Epilogueの構成になっており、そのうちPART4が「RPA導入の成功事例」としてユーザー企業のインタビュー記事が載っています。
具体的には以下の11社です。
- 【1】イープラス:小さな成果"の素早い周知がスムーズな全社展開に貢献
- 【2】JTBグループ(株式会社JTB):サポート窓口の明確化と成功例の周知で利用促進を図る
- 【3】りらいあコミュニケーションズ:アウトソーシングのプロ"のスキルを発揮
- 【4】AGC:「新しい価値を創造する」という目的の推進手段として活用
- 【5】東京ガス:中央集権型でノウハウの共有とガバナンスなどを追求
- 【6】京葉銀行:失敗を教訓に再トライ、人材有効活用の一翼を担う
- 【7】ジェイシービー:システム連携や時限性のある業務にRPAを導入
- 【8】つくば市役所:企業と共同研究でRPAに着手 他自治体への情報提供にも尽力
- 【9】立命館大学:ERP連携も含めた財務経理業務の効率化に成功
- 【10】札幌東徳洲会病院:大病院の医療事務の効率化に活躍、人とロボットが連携
- 【11】リンネット導入効果は働き方改革以外にも波及、新たなビジネスを創出
真っ先にRPAに飛びついた金融機関はもちろんのこと、サービス業、インフラ、メーカーに、自治体や教育機関、医療機関と、RPAが「まだまだこれから」と思われている業態にまで広げてしっかり特集されています。
もちろん、各社の自動化事例も図で表現されてます。
前述のとおりWinActorの本なので、全てWinActorユーザーではありますが、このパートにおいてはツールの特性よりは
・RPA導入の背景
・導入内容(適用業務)
・得られた効果、起きた変化
という観点が重要になってきます。
「WinActorユーザーだから自分には参考にならないな」とは考えないでフラットに読むことをオススメします。
広告特集も幅広い
どうしても「広告特集」というと読む気が起きずに飛ばしてしまうこともあるかもしれませんが、この特集も馬鹿に出来ない内容です。
WinActor代理店8社それぞれへのインタビュー記事という構成で作成されていて、ここはやはり代理店の広告という位置づけではあるんですが、「RPA×○○」という統一されたテーマ設定で学べるようになっています。
具体的には以下の8テーマです。
各社が、このテーマの中で自社の商材についてアピールするんですが、他のコラムと同様に、参考知識として読むに足るものですので、勉強にはなるかと。
「自分はRPAの保守・運用に携わっているけど、それをサービス化している他社はどんなことやってるんだろう」という比較にも使えると思います。
※繰り返しになりますが、この広告特集にいるのは全てWinActor代理店企業ですから、その前提で読むことを推奨します
まとめ
これからもRPAに携わっていく予定のある方は、WinActorユーザーであるかどうかによらず、得られるもののある書籍になっています。
WinActorユーザーならなおさら。
自分の立ち位置と、この本のスタンスをしっかり意識して、どうやって自分のものにしていくか、を考えながら読むことを推奨します。